現代人はオーラルケアに関心が高く、歯のホワイトニングに通う人も増えていますよね。

「昔の人は歯なんて磨かなかったんじゃないの?」
と思うかもしれませんが、実は全く逆です。

江戸っ子は、現代人以上に「歯の白さ」に異常なこだわりを持っていました。

今回は、モテるために歯を磨きすぎた江戸の男たちと、当時の歯磨きツールについて解説します。

この記事の要点

  • 江戸っ子は朝の「歯磨き」が大好きだった
  • 歯ブラシは「房楊枝」、歯磨き粉は「砂」を使っていた
  • 白い歯は「粋」でモテる条件!でも磨きすぎてボロボロに?
絵本時世粧に描かれた歯磨きの様子
『絵本時世粧』上之巻(国立国会図書館蔵)

江戸の歯ブラシ「房楊枝(ふさようじ)」

そもそも、人類の歯磨きの歴史は古く、紀元前5000年のバビロニアですでに麻布を使って歯を磨いていた記録があります。

日本では、仏教と共に伝わった「歯木(しぼく)」という木の枝で口を清める習慣がルーツとなり、江戸時代には「房楊枝(ふさようじ)」という道具が定着しました。

【房楊枝の構造】

  • ヘッド側: 柳などの木の繊維を煮て、金槌で叩いてフサフサのブラシ状にしたもの。
  • 持ち手側: 先が尖っており、爪楊枝(ピック)として使える。

つまり、歯ブラシと爪楊枝がセットになった、2wayの便利アイテムだったのです。

塩から「砂」へ!進化した江戸の歯磨き粉

道具だけでなく、「歯磨き粉」も進化しました。

日本最古の医学書『医心方』には「塩」で磨く記述がありますが、江戸時代前期も「赤穂の花形塩」などが定番でした。

しかし1625年頃になると、塩ではなく「房州砂(ぼうしゅうずな)」を使った新しい歯磨き粉が登場します。

主成分は「研磨剤」たっぷり

房州砂とは、千葉県の房総半島で採れる粒子の細かい土(白土)のこと。
現代で言う炭酸カルシウム、つまり「研磨剤」です。

これに香料を混ぜたものが、物売りによって売り歩かれました。

  • 安いもの: 1袋 8文(約240円)
  • 高級品: 1袋 130文(約4,000円)

高級品には漢方薬や香木が含まれており、口臭予防の効果も謳われていました。

なぜそこまで?「白い歯=モテる」の法則

江戸の男性たちが熱心に歯を磨いた理由。
それは健康のためというより、「吉原でモテるため」でした。

当時の美意識(粋)として、「色の白さは七難隠す」ならぬ「歯の白さは男の武器」とされていたのです。

歌舞伎役者のような白い歯に憧れた男性たちは、研磨剤たっぷりの房州砂で、毎日ゴシゴシと力を入れて磨きました。

その結果、歯のエナメル質が削れてしまい、逆に歯がボロボロになる人も続出したと言われています。
美意識が高すぎるのも考えものですね。

女性はあまり磨かない?「お歯黒」の意外な効果

一方で、女性(特に既婚者)は男性ほど熱心に白い歯を求めてはいませんでした。

なぜなら、結婚すると「お歯黒(おはぐろ)」で歯を黒く塗ってしまうからです。

実はこのお歯黒、見た目のインパクトはさておき、歯のコーティング作用がありました。
虫歯や歯周病、口臭の予防に非常に効果的だったため、結果としてお歯黒をしている女性の方が歯が丈夫だったとも考えられています。

💡 やさしい江戸案内の雑学メモ

「お歯黒」はいつから?

お歯黒の歴史は非常に古く、古墳時代の遺骨からも痕跡が見つかっています。
平安時代には貴族の男性も化粧として行っていましたが、江戸時代になると「既婚女性の証」として定着しました。

ちなみに農村部では、手間とお金がかかるため、祭りや結婚式などの特別な日だけ黒く塗っていたそうです。

まとめ|江戸っ子はオーラルケア意識高め

江戸時代の人々は、房楊枝と最新の歯磨き粉を使いこなし、現代人に負けないほど口元の身だしなみに気を使っていました。

ただ、「白くしたい!」という一心で磨きすぎて歯を削ってしまう失敗は、現代の私たちも気をつけたいポイントですね。

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参考文献