幕府の制度づくり、江戸城や街道の整備、豊臣家との関係、海外貿易など、江戸時代初期の流れをざっくり追えるように整理しています。
色分けの見方
- 江戸・幕府:江戸幕府や徳川家に関係する出来事
- 地方・諸国:各地の大名・城・人物・地域に関する出来事
- 海外・外交:海外貿易や外国との関係に関する出来事
1603年(慶長8年)の出来事
1月
- 江戸・幕府 徳川家康がカンボジア国王に書簡を送り、貿易を始める。
- 甲斐 28日、家康の九男・徳川義直が2歳で甲斐藩主となる。ただし甲斐には入らず、家康や生母のお亀の方とともに駿府城で暮らしていた。
2月
- 江戸・幕府 12日、天皇により徳川家康が征夷大将軍に任命され、江戸に幕府を開く。
- 江戸・幕府 21日、江戸幕府が郷村掟を公布する。百姓の安全、逃散百姓の帰村、直訴など、農村支配に関わる内容だった。
3月
- 江戸・幕府 大名普請役によって、江戸の街の造成が始まる。
4月
- 京都 京都の北野天満宮で、出雲阿国がかぶき踊りを演じた。
- 江戸・幕府 春ごろ、上方大名を江戸へ参勤させる。
- 京都 1日、2代目茶屋四郎次郎が亡くなる。安土桃山時代から続く京都の豪商で、当主は代々「茶屋四郎次郎」を名乗った。
- 大坂 22日、豊臣秀頼が内大臣となる。徳川家康が右大臣に昇進したことで、内大臣の席が空いたためだった。
6月
- 薩摩 7日、薩摩藩主・島津忠恒が外国貿易に関する条令三か条を制定する。忠恒は1606年以降、島津家久と名乗る。
7月
- 江戸・幕府 28日、家康の孫である千姫が、7歳で豊臣秀頼に嫁ぐ。
10月
- 江戸・幕府 2日、幕府が木村勝正らに淀川過書船を管掌させる。
- 出羽 秋田藩角館・六郷地方で、新政府である江戸幕府に反発する動きが起こる。六郷氏旧臣の士豪ら1000人あまりが蜂起した。
11月
- 常陸 7日、家康の十男・徳川頼宣が2歳で水戸20万石を与えられる。ただし水戸には入らず、駿府で生活していた。
12月
- 肥後 8日・9日、熊本藩主・加藤清正がキリシタンを処刑する。清正はキリシタンに日蓮宗への改宗を命じたが、肥後に残った信徒の中から殉教者が出た。
日付不明
- 江戸・幕府 日本橋が架橋される。
- 江戸・幕府 伊勢山田奉行を置く。
- 長崎 『日葡辞書』が、イエズス会によって1603年から1604年ごろに発行される。日本語とポルトガル語を解説した辞書である。
1604年(慶長9年)の出来事
1月
- 江戸・幕府 幕府が永楽銭1銭の価値を、鐚銭4銭とする換算率を定める。
- 江戸・幕府 27日、江戸幕府が松前藩主・松前慶広に、蝦夷地での貿易特権を与える。
2月
- 江戸・幕府 日本橋を五街道の基点とし、諸街道の整備と修理を行う。同時に一里塚も設置する。
一里塚とは、旅行者の目印として大きな街道のそばに1里ごとに作られた土盛りのことです。1里は約3.927キロメートルです。
3月
- 京都 20日、黒田孝高、通称・黒田如水または黒田官兵衛が京都伏見藩邸で59歳で亡くなる。遺品である北条本『吾妻鏡』を徳川秀忠に献上した。
5月
- 海外・外交 朝鮮国王が対馬に対し、釜山浦での交易を認める。
- 江戸・幕府 3日、糸割符制が始まる。生糸の輸入に関して、堺・長崎・京都の選ばれた商人に一括購入の特権を与える制度だった。
6月
- 長門 1日、長州藩主・毛利輝元が萩の指月で萩城の築城を始める。完成は1608年となる。
7月
- 近江 彦根藩主・井伊直継が彦根山に彦根城を築き始める。佐和山城の印象を一掃する目的もあったとされる。
- 江戸・幕府 17日、徳川秀忠と江の子である徳川家光が生まれる。春日局が乳母となった。
8月
- 江戸・幕府 閏12日、フィリピン長官の使節が江戸で徳川家康に拝謁する。このとき、キリスト教布教の要請も行われた。
日付不明
- 江戸・幕府 幕府が幕領の検地を行う。
- 江戸・幕府 町奉行を北と南の2か所とする。
- 加賀 加賀藩主・前田利長が十村制度を設ける。地方の有力農民に農村管理と徴税を担わせる制度だった。
1605年(慶長10年)の出来事
3月
- 江戸・幕府 5日、朝鮮国使が伏見城で徳川家康に拝謁する。本多正信や西笑承兌が講和を行った。
4月
- 大坂 12日、豊臣秀頼が右大臣に任じられる。
- 江戸・幕府 16日、伏見城で将軍宣下が行われ、徳川秀忠が第2代征夷大将軍となる。
5月
- 大坂 豊臣秀頼に対して家康から拝謁要請が出されるが、秀頼は応じなかった。
6月
- 京都 京都所司代・板倉勝重が市中巡視を行う。京都で辻斬りが横行していたためだった。
7月
- 江戸・幕府 21日、林羅山が京都二条城で家康に拝謁する。林羅山は朱子学派の儒学者で、林家の祖である。
- 伊予 28日、今治藩主・藤堂高虎が塩屋町を作り、塩の専売を行う。
9月
- 江戸・幕府 諸大名に国絵図・郷帳の作成を命じる。これが慶長の国絵図である。
- 江戸・幕府 13日、幕府がスペイン人に年間4隻の通商を許可する。
- 土佐 20日、山内一豊が亡くなる。馬揃えで妻が蓄えていた金で良馬を買ったという逸話があり、正直、本人よりも妻のほうが有名かもしれない。
11月
- 信濃 浅間山が噴火する。噴火は翌年の正月まで続いた。
日付不明
- 江戸・幕府 江戸や京都で辻斬りが横行する。
- 江戸・幕府 南蛮から入ってきた煙草が江戸で流行する。
1606年(慶長11年)の出来事
1月
- 京都 清洲藩士・浅岡平兵衛が京都の蓮華王院、つまり三十三間堂で通し矢を行い、51本を射たことで「天下一」の名を得る。
3月
- 江戸・幕府 1日、諸大名の普請役によって江戸城の増築工事を行う。大名の財力を削ぐ目的もあり、譜代大名にとっては徳川への忠誠を見せる機会でもあった。
4月
- 江戸・幕府 幕府が関ヶ原の合戦後の処理の一つとして、宇喜多秀家を八丈島へ流罪にする。
- 江戸・幕府 28日、家康が武家官位について、幕府の推挙を奏請する。
6月
- 西国 薩摩・長崎・紀伊などに外国船が来航する。
8月
- 山城 角倉了以が桂川上流の大井川で舟運を始める。
9月
- 江戸・幕府 23日、江戸城の二の丸が完成し、西の丸から秀忠が移る。
10月
- 江戸・幕府 8日、江戸幕府がオランダ船にも通航許可を出す。
11月
- 対馬 対馬藩主・宗義智が、家康の国書を偽造して朝鮮へ送る。
- 武蔵 多摩郡の村々から、江戸城普請用資材の石灰を運送する。
12月
- 江戸・幕府 8日、江戸幕府が、それまで使われていた銅銭の永楽通宝の使用を禁止し、慶長通宝の鋳造を始める。
日付不明
- 江戸・幕府 幕府が駿府に銀座を設置する。
- 江戸・幕府 江戸城造営にともない、日本橋大伝馬町・南伝馬町・小伝馬町を開く。
1607年(慶長12年)の出来事
1月
- 江戸・幕府 7日、観世と金春の両家が江戸城で演能を行う。このときは町人にも観覧が許された。
観世と金春は、江戸時代には能楽の四座一流に数えられました。四座は観世・宝生・金春・金剛で、現在は能楽五流派と呼ばれています。
2月
- 江戸・幕府 20日、出雲阿国が江戸城で歌舞伎踊りを上演する。
3月
- 地方・諸国 5日、松平忠吉が亡くなる。松平忠吉は徳川家康の四男で、徳川四天王の一人・井伊直政の娘婿だった。忠吉の後を追い、小笠原吉光ら4人が殉死した。
閏4月
- 江戸・幕府 1日、林羅山が幕府の儒者となる。
- 越前 8日、結城秀康が34歳で亡くなる。その後を追って2名が殉死した。
- 尾張 26日、徳川義直が尾張国清洲藩主53万石へ転封される。この後、清洲藩は廃藩となり、尾張藩が立てられる。
- 山城 29日、松平忠勝が伏見城代となる。
5月
- 佐渡 2日、金山の生産量が減少したことから、大久保長安が監督となる。
- 江戸・幕府 6日、文禄・慶長の役のあと、朝鮮使節が来日し、江戸城で秀忠に拝謁する。
7月
- 江戸・幕府 3日、諸大名に普請役として江戸城の天守と石垣を修築させる。
9月
- 江戸・幕府 3日、江戸城の天守と大手門が完成する。
10月
- 肥前 2日、龍造寺政家が52歳で亡くなる。家を継いでも父に操られ、父が亡くなった後も苦労した人物である。
- 江戸・幕府 14日、家康がそれまで蓄えてきた金銀を秀忠に分与する。
12月
- 駿河 22日、駿府城で火事が起こり全焼する。城内での失火により、完成して間もない本丸御殿が焼失した。
- 京都 27日、西笑承兌が60歳で亡くなる。臨済宗の僧で、相国寺を再建し、相国寺中興の祖と呼ばれた。
日付不明
- 江戸・幕府 江戸幕府が諸大名に人質を江戸に常住させる。
- 江戸・幕府 煙草を吸う習慣が町民に広がる。まだ煙草の葉を国内で十分に作れず、外国からの輸入品だったため、銀の流出が問題視された。
- 出羽 秋田藩の院内銀山を開く。
- 駿河 角倉了以が富士川で舟運を始める。
1608年(慶長13年)の出来事
2月
- 大坂 24日、三宝院の義演が豊臣秀頼の疱瘡の平癒を願う。疱瘡とは天然痘のこと。
3月
- 駿河 11日、駿府城を再建する。
- 伊予 国府藩の藤堂高虎が、今治に築城する。
4月
- 陸奥 大久保長安が南部に金鉱を開く。
5月
- 江戸・幕府 フィリピン長官ビベロが、家康と秀忠に書簡を送る。内容は日本商船の制限、商船派遣の取り決め、スペイン人の保護、キリスト教布教の許可を求めるものだった。
- 京都 角倉素庵が『伊勢物語(嵯峨本)』を刊行する。
6月
- 伊勢 4日、狩野光信が44歳で亡くなる。安土桃山時代の狩野派の絵師である。
7月
- 江戸・幕府 20日、関東郡代の伊奈忠次に尾張国幕領の検地を行わせる。
8月
- 伊勢 25日、藤堂高虎が津に移る。
9月
- 江戸・幕府 5日、幕府が小石川伝通院を造営する。
10月
- 近江 1日、木食応其が73歳で亡くなる。もとは六角氏に仕える武将だったが、のちに出家した。高野豆腐の製法を発展させ、現在に近い高野豆腐を作り出したともされる。
11月
- 江戸・幕府 15日、江戸城で行われた浄土宗と日蓮宗の宗論により、日経が処罰される。
12月
- 江戸・幕府 8日、幕府が永楽銭の使用停止令を再度出す。永楽銭は使い勝手が良かったため、禁止令が出ても庶民の間で使われ続けていた。
日付不明
- 江戸・幕府 慶長江戸絵図がこのころに完成する。
- 播磨 姫路藩主・池田輝政が姫路城を改築する。西国へのにらみを利かせるための改築ともいわれる。
1603年〜1608年は江戸幕府の基礎固めの時期
1603年から1608年は、江戸幕府が始まり、徳川家による支配体制が少しずつ整えられていく時期でした。
征夷大将軍となった徳川家康は、江戸に幕府を開き、街道・江戸城・貨幣・貿易・大名統制などを整えていきます。
一方で、豊臣秀頼はまだ大坂に健在で、豊臣家の存在感も残っていました。
そのため、この時期は完全に徳川の時代になりきったというより、徳川中心の時代へ移っていく途中の緊張感がある時期ともいえます。
江戸幕府が安定していくまでの流れを見るうえで、1603年から1608年はかなり重要な時期です。

