江戸時代初期の出来事を、1650年(慶安3年)から1656年(明暦2年)まで年表形式でまとめています。この時期は、徳川家光の晩年から第4代将軍・徳川家綱の時代へ移っていきます。
家光の死後、慶安事件や承応事件が起こり、幕府は浪人・かぶき者・若衆歌舞伎への取り締まりを強めていきます。一方で、玉川上水の完成、江戸市中法度、防火対策、川へのごみ捨て禁止など、江戸の都市管理も進みました。
家光の強い政治から、幼い家綱を支える体制へ移っていく流れが見える時代。

色分けの見方

  • 江戸・幕府:江戸幕府や江戸市中に関係する出来事
  • 地方・諸国:各地の藩・人物・地域に関する出来事
  • 海外・外交:外国や対外関係に関する出来事

1650年(慶安3年)の出来事

この年の将軍は徳川家光、天皇は後光明天皇。
家綱が将軍家光の代理としてオランダ使節に会うなど、次の時代への動きも見えてきます。

3月

  • 江戸・幕府 7日、徳川家綱が将軍家光の代理としてオランダ使節に面会する。漂流したオランダ人を返還したことへの礼を受けた。
  • 紀伊 10日、青巌寺などの僧坊1000間余りが焼失した。

5月

  • 江戸・幕府 7日、徳川義直が51歳で亡くなる。家臣4人が殉死した。

殉死(じゅんし)とは、主君の死に合わせて家臣が後を追って自害すること。

6月

  • 大和 長谷寺本堂が建立される。

7月〜9月

  • 畿内 大雨により水害が多く発生した。

8月

  • 海外・外交 6日、オランダ人が牟礼野で仏郎機(大砲)を試射する。

仏郎機とは、16世紀の大砲の1つで、後装式の大砲。

9月

  • 江戸・幕府 幕府が、関東で猟師以外の農民が鉄砲を所持することを禁止する。

10月

  • 江戸・幕府 幕府がからの再度の援兵要請を断り、その事情を諸大名に知らせる。
  • 美濃・伊勢 3日、山田奉行・石川政次が洪水被害を巡視した。

12月

  • 江戸・幕府 27日、幕府が美濃・伊勢両国の河川堤防の修理と、水害を受けた農民の救援を命じる。

日付不明

  • 江戸 この夏、林羅山が編纂した『本朝通鑑』が完成させた。
  • 江戸 この年、伊勢への御蔭参りが流行する。
  • 陸奥 津軽藩が尾太鉱山で銀の採掘を始まった。。
  • 琉球 久米村で、明国風の服装から琉球風の服装へ改める。
  • 琉球 尚象賢が『中山世鑑』を編集した。

1651年(慶安4年)の出来事

この年は、将軍が徳川家光から徳川家綱へ移る、天皇は後光明天皇。。

家光の死後、由井正雪らによる幕府転覆計画が発覚し、慶安事件が起こります。

4月

  • 江戸・幕府 20日、将軍・徳川家光が48歳で亡くなる。家綱が将軍を継ぎ、側近の堀田正盛らが殉死した。

6月

  • 江戸・幕府 10日、老中・奏者番・大目付・目付などが、評定所で徳川家綱に誓詞を提出する。

誓詞(せいし)とは、忠誠や約束を示す文書のこと。

7月

  • 江戸・幕府 18日、幕府が江戸町人の家督相続法を再び定める。
  • 江戸・幕府 23日、(慶安事件)由井正雪らの幕府転覆計画が発覚し、幕府は浪人の丸橋忠弥らを捕らえる。
  • 刈谷 10日、刈谷藩主・松平定政が幕政を批判して出家する。18日に改易される。
  • 相模 24日、小田原藩が箱根の関所などに警戒を命じる。
  • 駿河 26日、由井正雪が駿府で自害する。享年47歳。

慶安事件は、由井正雪ら浪人による幕府転覆計画、家光の死後の政治不安や、浪人問題が背景にありました。

8月

  • 江戸・幕府 18日、徳川家綱が江戸で第4代将軍に任じられる。
  • 京都 13日、京都所司代・板倉重宗が、由井正雪の残党を探すよう命じる。

10月

  • 江戸・幕府 幕府が大名・旗本に対し、浪人を抱えて置くことを禁じる。

12月

  • 江戸・幕府 11日、幕府が50歳未満の大名・旗本に末期養子を許可する。これにより、末期養子の禁がゆるめられた。
  • 江戸・幕府 20日、幕府が関所制度を公布する。

末期養子とは、武家の当主が後継ぎを残さないまま危篤になったとき、家の断絶を避けるために急いで立てる養子のことです。当主が亡くなった後に、本来なら家が断絶するところを、死ぬ間際に跡継ぎを決めたという体裁をたもつための使われたりしました。

日付不明

  • 大坂 この年、大坂の青物市場が京橋1丁目から京橋北詰片原町へ移る。

1652年(慶安5年・承応元年)の出来事

この年は、将軍は徳川家綱、天皇は後光明天皇。
慶安から承応へ改元される年。
江戸市中のかぶき者や浪人への取り締まり、若衆歌舞伎の禁止など、治安と風俗への管理が強まります。

1月

  • 江戸・幕府 20日、幕府が2月2日から江戸市中のかぶき者を捕らえることを諸大名に伝える。

3月

  • 佐渡 13日、(佐渡一揆)佐渡奉行配下の辻藤左衛門が一揆を起こし、住民ら約70人が殺害される。

4月

  • 江戸 4日、芝居小屋の村山座が市村座と名前を変える。

6月

  • 江戸・幕府 10日、幕府が将軍家綱が幼いうちは、御三家と井伊直孝に江戸にいて将軍を補佐するよう命じる。
  • 江戸・幕府 20日、幕府が男色の風潮を改めるため、若衆歌舞伎を禁止する。

若衆歌舞伎とは、少年役者による歌舞伎、風紀の乱れやトラブルの原因になるとして禁止されました。

9月

  • 江戸・幕府 13日、(承応事件)増上寺への放火、強奪、老中暗殺計画が発覚し、浪人の別木庄左衛門らが捕らえられた。
  • 江戸・幕府 18日、将軍の代替わりにより、慶安から承応へ改元される。

10月

  • 江戸・幕府 26日、幕府が江戸市中の浪人を調査する。

12月

  • 江戸・幕府 21日、幕府が江戸歌舞伎の狂言4座、操り芝居3座などに興行停止を命じる。

日付不明

  • 肥前 平戸藩が幕府の命により、長崎湾口7か所に砲台と石垣を築く。
  • 播磨 赤穂藩が塩田開発を本格化した。
  • 土佐 土佐藩で尾池四郎左衛門が捕鯨業を始めた。
  • 豊前 中津城下に水道が引かれた。

1653年(承応2年)の出来事

この年の将軍は徳川家綱、天皇は後光明天皇。
玉川上水の工事が始まり、江戸の水道整備が進みます。
また、歌舞伎は野郎歌舞伎として再開されます。

1月

  • 江戸・幕府 13日、幕府が麹町・芝口の町人らに玉川上水の工事を許可し、工事費7500両を与える。
  • 江戸・幕府 26日、幕府が一季居・半季居の若党や中間など、武家奉公人の出替わり日を2月15日と定める。

一季居・半季居とは、一定期間だけ雇われる奉公人のこと。
出替わり日とは、奉公人が勤め先を変える決まった日のこと。

2月

  • 江戸・幕府 7日、幕府が諸大名に対し、参勤交代で連れてくる人数を減らすよう指示する。
  • 大坂 大坂町人の遺産相続法と米仲買に関する条例を定めた。

3月

  • 江戸・幕府 幕府が歌舞伎の興行再開を許可する。これ以降、成人男性が演じる野郎歌舞伎が中心となった。

6月

  • 江戸・幕府 27日ごろ、幕府が秤座を設置する。東国33か国は守随彦太郎、西国33か国は神善四郎の秤を使うと定める。
  • 江戸・幕府 29日、老中・松平信綱が江戸城天守修理の責任者に任じられる。
  • 京都 23日、禁裏が焼け、仙洞御所を仮御所とする。

秤座とは、重さを量る秤を管理するための組織であり、商売で使う秤を統一する意味がありました。

7月

  • 江戸・幕府 16日、幕府が辻立・門立を禁じ、辻番人の警備を強めるよう命じる。
  • 大坂 30日、天満青物市場が開設される。

辻立・門立とは、道端や門前に立って人を待ち伏せたり、声をかけたりする行為ですが、治安維持のために禁じられました。

8月

  • 安芸 上旬、暴風雨で洪水が発生する。広島付近で流失家屋5000戸、死者5000人余りの大きな被害が出る。
  • 下総 (佐倉惣五郎事件)佐倉藩公津村の名主・惣五郎が、藩主・堀田正信の厳しい政治を幕府に直訴する。

直訴とは、本来の手続きを越えて、直接上位の権力者に訴えることであり、行ったものには厳しく罰せられる。

日付不明

  • 京都 石川丈山が東本願寺の新しい建物に、枳殻亭渉成園を造営した。

1654年(承応3年)の出来事

この年の将軍は徳川家綱、天皇は後光明天皇。
玉川上水が完成し、江戸の水道整備が大きく進みます。
一方で、かぶき者や浪人への取り締まりも続きました。

2月

  • 江戸・幕府 4日、幕府が男色、足軽・中間の二本差し、美しい服装を禁止する。
  • 江戸・幕府 13日、幕府がかぶき者の捕縛を命じる。

足軽・中間は、武家に仕える下級の奉公人、身分に合わない帯刀や派手な服装が取り締まりの対象になりました。

4月

  • 江戸・幕府 17日、幕府が5万石以上の大名に禁裏造営の費用を負担させる。1万石につき銀1貫の割合だった。
  • 江戸 26日、江戸市中で浪人・山中半左衛門が9人を斬殺し、12人に重傷を負わせる。

5月

  • 江戸・幕府 18日、幕府が長崎奉行に対し、異国船が来航した際の対応を指示する。

6月

  • 江戸 20日、玉川上水が完成した。

玉川上水は、江戸へ水を引くための重要な上水道、人口が増えた江戸を支える大きな都市インフラでした。

8月

  • 江戸・幕府 25日、幕府が大坂城代・内藤忠興の赴任にあたり、職務内容などを指示する。

10月

  • 江戸・幕府 15日、幕府が諸大名の家臣に対し、派手な服装を禁じる。

11月

  • 江戸・幕府 2日、幕府が病人以外の乗り物利用を禁止する。

1655年(承応4年・明暦元年)の出来事

この年は、後西天皇の即位により、元号が承応から明暦へ変わります。
江戸では市中法度が定められ、都市のルールがさらに整えられました。

1月

  • 江戸・幕府 20日、幕府が江戸市中で子供が凧を揚げることを禁じる。

2月

  • 江戸・幕府 2日、幕府がかぶき者の捕縛を命じる。

3月

  • 江戸・幕府 20日、幕府が江戸市中に、防火対策として井戸を掘るよう命じる。
  • 武蔵 川越藩で野火止用水が完成した。

4月

  • 江戸・幕府 5日、幕府が糸割符制度を廃止し、商人同士の自由な取引に近い相対商売へ移す。
  • 京都 13日、後西天皇の即位により、元号が明暦に改められる。

相対商売とは、売り手と買い手が相談して値段や条件を決める取引のこと。

7月

  • 江戸・幕府 2日、幕府が玉川上水を麹町から江戸城二の丸庭内へ引く。

8月

  • 江戸・幕府 2日、幕府が宿駅で使う人馬の荷物重量や賃金、新銭売買に関する条例を定める。
  • 紀伊 下旬、紀州藩で台風により民家2000戸余り、堤1万間が倒壊し、材木7万本が流失した。

10月

  • 江戸・幕府 13日、幕府が江戸市中法度を定める。

11月

  • 江戸・幕府 12日、幕府が江戸市中の川へごみを捨てることを禁じる。
  • 紀伊 13日、和歌山城下で大火が起こり、天守以外の城内が焼失した。
  • 京都 26日、京都市中法度が増訂される。

12月

  • 江戸・幕府 幕府が銭貨の時価通用を認め、買い占めて独占販売することを禁じる。

日付不明

  • 京都 修学院離宮の造営が始まる。
  • 京都 山崎闇斎が堀川下立売橋付近で講席を開く。
  • 出羽 秋田藩が江戸廻米を始める。

1656年(明暦2年)の出来事

この年の将軍は徳川家綱、天皇は後西天皇。
江戸近郊の鷹場、長崎への異国船対応、キリシタン警戒、盗賊取り締まりなどが目立ちます。

5月

  • 江戸・幕府 14日、幕府が江戸近郊の鷹場で新しく家を建てることを禁じる。
  • 江戸・幕府 幕府が長崎奉行に対し、外国船が来航した際の対応を改めて指示する。
  • 江戸・幕府 幕府が西国大名に対し、キリシタンが来ることへの警戒を指示する。
  • 出羽 3日、庄内藩の鶴岡城下で大火が起こる。民家700戸余り、米3万7000俵が焼失した。

7月

  • 江戸 鶺鴒組と呼ばれる御家人の子弟たちが横行した。

鶺鴒組とは、御家人の子弟による若者集団、町で乱暴なふるまいをする存在として問題になりました。

8月

  • 江戸・幕府 29日、幕府が長崎に来航したシャム国船を帰国させる。

10月

  • 江戸・幕府 13日、幕府が浅草に鋳銭座を設置する。
  • 江戸 16日、江戸で大火が起こる。元呉服町から出火し、京橋八丁堀周辺の48町、890余戸が焼失した。

鋳銭座(ちゅうせんざ)とは、銭貨を鋳造するための施設。

12月

  • 江戸・幕府 28日、幕府が関東諸国に盗賊取締令を出す。

日付不明

  • 諸国 この年、各藩で知行制度の改革が進む。

1650年〜1656年は家光から家綱へ移る時期

1650年から1656年は、徳川家光の晩年から、徳川家綱の時代へ移る大きな転換期でした。

1651年に家光が亡くなると、幼い家綱が第4代将軍となります。
その直後に慶安事件が起こり、幕府は浪人やかぶき者への取り締まりを強めました。

1652年には若衆歌舞伎が禁止され、承応事件も起こります。
これは、幕府が治安と風俗を強く管理しようとしていたことを示しています。

一方で、江戸の都市整備も進みました。
1653年に玉川上水の工事が許可され、1654年には完成します。
人口が増える江戸にとって、水の確保は非常に重要でした。

1655年には江戸市中法度が定められ、川へのごみ捨て禁止や防火井戸の整備など、都市生活のルールも細かくなっていきます。

この時期は、家光の強い支配から、幼い家綱を支える幕府体制へ移りながら、治安・風俗・都市整備を通して江戸幕府の管理がさらに細かくなっていく時期といえます。

⇒江戸時代初期の年表|1645年〜1649年の出来事まとめ